超えるべき壁は”兄”と”世界”。クライマー今泉到樹選手の挑戦。 2019.7.16
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皆さん、東京オリンピックのチケット抽選結果はいかがでしたか?
希望のチケット当選しました??
開催まで残り400日を切ったわけですが、今回のオリンピックはサーフィン、スポーツクライミング、空手、スケートボードの4競技16種目が初めての採用という事でも話題ですよね。
中でも、スポーツクライミングは茨城のレベルが高いんですよ!
“クライミング界の女王”と形容される野口啓代選手はお隣の龍ケ崎市出身で東洋大牛久の卒業生。
クライミングジムなんて、これまたお隣つくば のスポーレクライミングジム、阿見のRockyボルダリングジムをはじめ県南地域だけでも5軒もあるという環境の良さ!
そんな恵まれた環境の中、牛久にもクライミングの世界に飛び込んだ少年がいるんです!!!
若干13歳のクライマー、今泉到樹くん。
今回は5月に埼玉県加須市で開催された、「第20回リードKazoクライミングカップ」から、つくば のスポーレクライミングジムでの日々のトレーニングまでを密着。
クライミング写真もたっぷりでお届けします!
第20回リードKazoクライミングカップ
あぢ〜〜(汗)
5月26日に開催された、「第20回リードKazoクライミングカップ」。
大会当時の加須市の気温は32℃の真夏日。体育館内は若干涼しいが、それでも熱気はムンムン。
会場ではEDMが流れ、なんだか新しいスポーツのワクワク感マシマシで気分も⤴︎⤴︎⤴︎




スポーツクライミングは、ロープを付けないフリークライミングスタイルで4~8手ほどのコースをいくつ登る事が出来るかを競う「ボルダリング」。
ロープを付けて高さを競う「リード」。
ロープを付けた状態で速さを競う「スピード」の3種目があります。
よく仕事帰りに、”軽くやってく〜”的に流行っているのは「ボルダリング」ですね。
2020年の東京オリンピックでは、この3種目を複合した結果で成績を決める「コンバインド」が採用される事になっています。
そして、Kazoクライミングカップは「リード」の大会。
予選は2本を登り、上位8人が決勝へ進出するルール。
まずは予選1本目!



予選1本目は、登りやすい代わりに気を抜いてたら落ちてしまったという到樹くん。まずまずの結果。それにしても他の選手と比べると登るスピードが速い(驚)
気を取り直して、2本目!!




2本目は持ちにくいホールドで気が抜けないチャレンジ。
予選を終えた時点での到樹くんの顔に笑顔は無く、話かけづらい重い空気に。。。
上位8人が決勝へ進出するルールだが、手応えは微妙…。

結果は…
8位で無事予選通過!

無事予選通過の発表を受けて、めっちゃ笑顔で腹ごしらえ(笑)
決勝戦は、開始直前まで選手は別室待機となり課題は直前まで伏せられている。決勝課題の公開時間も決められていて、それを過ぎると選手はまた別室での待機となる。自分以外の選手の試合を見る事も出来ない。この為、選手は「人生で初めて目にする壁」の登頂イメージを課題が公開される短時間でつくり上げなければならない。


いざ決勝戦!!!





決勝は1本勝負。全体的に手数が少なく、疲れない代わりに足場が滑りやすく苦戦。余力があったからもう少し行けたと反省しつつ、残りの選手が登り終えるのを見守りながら結果を待つ。

そして・・・。
見事予選からランクアップして
6位入賞!

いや〜、取材に来たから結果がイマイチ…なんて事にならなくてよかったぁ〜^^
日々トレーニングするつくばのスポーレクライミングジムへ
牛久新聞
こんにちは〜・・・って、
到樹くん?どこ??

牛久新聞
w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w

到樹くん
こんにちは。
牛久新聞
相変わらず凄いね。リアルスパイダーマン…。
到樹くん
いやまだこれ、アップ中です(^ ^)。
一回休憩します。
牛久新聞
じゃあ、早速色々聞いちゃっていいかな?
到樹くん
はい。
よろしくお願いします^^
牛久新聞
この間は、6位入賞おめでとう!
到樹くん
ありがとうございます^^
牛久新聞
気持ち的には、もうちょっと行けたんじゃないかって感じ?
到樹くん
うん。そういう気持ちはありますね。
牛久新聞
試合前って食事制限とかあるの??
到樹くん
2〜3キロは落としますね。
牛久新聞
この間の埼玉はリードの大会だったけど、
到樹くんの得意種目は??
到樹くん
リードと、スピードはまあまあです。。。
牛久新聞
スピードはあんまり好きじゃないの?
到樹くん
やってみれば楽しいけど、そんなにやった事がなくて。あっ、動画あります。
牛久新聞
めっちゃ速いじゃん(゜ロ゜)
これで”まあまあ”って…。

今年の5月11日に開催された第5回スポーツクライミング東京選手権大会のスピードジュニアカテゴリー部門では、なんと優勝!
兄の背中を追って
牛久新聞
到樹くんって元々なんでクライミングをやろうと思ったの?
到樹くん
お兄ちゃんがやっていたから、それを見て。

到樹くんのお兄ちゃんは、2017年のワールドカップ八王子大会にも出場した日本代表のクライマー、今泉結太くん(18歳)。
(結太くんのご紹介はこちら)


牛久新聞
今いくつ?
到樹くん
13歳です。
牛久新聞
クライミングを始めたのは?
到樹くん
小1だけど、その時はまだ趣味程度で。
牛久新聞
それは、ココ(スポーレクライミングジム)で?


到樹くん
そうです。
母
ココは、小学生からしか入れないんですよ。
危ないから。中にすら入らせて貰えなくて。
※今回、お母さんはちょっと恥ずかしいという事で、文字のみでご登場(笑)。
牛久新聞
やりたいなぁ〜と思いながら、外でずっと見ていたんだね。
到樹くん
うん。ちょっと登ってみたいなぁ〜って。
母
4月1日付けで1年生になったらすぐに来て登りましたよ^^


牛久新聞
大会に出場し始めたのは?
到樹くん
2年前ぐらいからです。
牛久新聞
大会に出場するって事は、勝ったり負けたりを経験する訳でしょ?
それまでの”趣味”とは違ってくるよね。
気持ちのコントロールが難しかったりするのかな??
チームスポーツじゃないから、みんなでワイワイ出来ないじゃない。
到樹くん
ん〜〜、悔しいってのはある。
なんだろ、、、予想より順位が下だったら悔しいから頑張ろう!って思います。
牛久新聞
お兄ちゃんと比べられることはあるでしょ?
到樹くん
たまにある。
牛久新聞
嫌な気持ちかな?
それともライバルかなお兄ちゃんは??
到樹くん
お兄ちゃんはライバルじゃない。
牛久新聞
そーなの!?
どういう存在?
到樹くん
異次元!!
強すぎて。
でも、いつか自分も難しいクライミングを登れたらいいなって思っています。
その気でいるけど ^^

牛久新聞
いいねー!負けん気!
今の目標は何かな?
到樹くん
近いうちに大会がないからあんまり明確な目標はないけど、いつかワールドカップに出場したいです。
母
ジュニアオリンピックが先じゃないの?
到樹くん
JOCは出れるか分からないでしょ?
牛久新聞
JOCはいつ?
母
今年は9月ですね。
ジュニアオリンピックと出場権

JOCジュニアオリンピックは、クライミングの夏の甲子園とも呼ばれ、例年8月に富山県の南砺市にある「桜が池クライミングセンター」で開催されている。
しかし、今年は8月に八王子で世界選手権が行われる為、開催が9月にずれ込んでいる。
さてここで、JOCジュニアオリンピックの出場権利についてお勉強しましょう。
大会へ出場するには日本山岳連盟の推薦を受けるか、”優先枠”、もしくは”各都道府県枠”のどちらかに入る事が条件となります。
まず、”優先枠”とは…
①印西・倉吉でのユースの大会8位以内
②前年のJOC決勝以上
③BJC・LJCという大人の大会で準決勝以上
これらが”優先枠”とされ、漏れた場合は”各都道府県枠”で出場権利を得るといった概要になっています。
で、”各都道府県枠”とは…
各都道府県山岳連盟が強化選手の順位などで決定する枠で、各都道府県で2~3枠程。
通常12月~5月くらいに行われる、国体代表選考大会及び強化選手選考会などの大会に出ていないと選考すらされません。

牛久新聞
到樹くんの今の状況は?
母
県大会で4位だったので、回ってくるかどうか微妙なところで…。
お兄ちゃんは日本山岳連盟の推薦を受けているので、出場は決まっているんですよ。
6月ぐらいまで全国で県予選をやっているので、決定するのが7月ぐらいの予定ですね。
牛久新聞
到樹くんは、発表を待つしかないと。
JOC出場に向けて今何か出来るわけじゃないんですね。
母
ちょっと前は県で8人ぐらい出場できたんですよ。
でも、オリンピック競技になった事で全国的に人気になっていて、
去年は県で3人しか出場できなくて。。
到樹くん
昔だったら、余裕で出場出来ました。
牛久新聞
あれ、そーなの!
母
全然出てこない県もあったので、前は。
その分の枠を他の県に回していたりしたので。
到樹くん
沖縄なんて、誰も出てなかったから。
母
今は人気で。県のトップ3人でも47都道府県だから、141人なので、、、。
牛久新聞
ボルダリング人気凄い!!
モテそうなスポーツだし!
母
このジムでも、カップルやご結婚された方いますよ。
牛久新聞
Σ(゚◇゚;)
母
リードは、2人1組で登っている人をもう一人が支えるので”吊り橋効果”があるんじゃないですかね?
牛久新聞
到樹くん、僕、クライミング始めます!!!
毎週来ます!!!!
到樹くん
あっ、はい…(;^_^A。
牛久新聞
すいません、取り乱しました。。。
気を取り直して…。学校では誰かやっていたりする?
到樹くん
前はやっていた子もいたけど、やめちゃったりしてるかな。
母
でも、ちょこちょこいますよ、牛久でも。
牛久新聞
そんな中、到樹くんはこのスポーツにハマったでしょ。
一番の魅力ってなんだろ?
到樹くん
練習は楽しいからやってますね。
苦しくてもそれを乗り越えないといけないので。
強くなりたくてやっているから。



牛久新聞
辞めたいと思った事は?
到樹くん
競技初めてまだそんなに経ってないので、辞めたいと思うほど辛い事はないです。
今は、勝てば楽しいから勝つために、力つけるために頑張っています。
息切れするぐらい限界まで追い込んだ時は楽しいです。脱力感が快感です^^
牛久新聞
到樹くんの手を見せて貰っていいかな?


1年前から10㎏も増した握力。今は左44㎏・右41㎏。
そして、指先に注目して欲しい。
分かりやすのが両手の中指。指先に向かって徐々に太くなっている。
これはクライマー特有の指の形。
到樹くんが本物のクライマーへ成長している証でもある。
牛久新聞
凄いね!!
母
登り方も兄そっくりになって来ましたよ。
見ていると、似てるな〜って(^ ^)。

兄の結太くんがクライミングを始めたキッカケは木登り。
幼い頃から木登りが大好きで小学校でも木登りをしていたら、危いという理由で先生から怒られてしまった結太くん。それでも登りたい結太くんを見て、ならばいくらでも登っていい場所へという事でジムに連れて行ったところ、今度は逆に”凄いね!”と褒められて、そこからクライミングにハマっていったというエピソードをお母さんが教えてくれた。
そんな兄の背中を見て、同じ世界に飛び込んだ到樹くん。
平日はトレーニングと週末は大会の日々。
学業が疎かにならないよう、試合会場には机を持ち込み空き時間には勉強。

兄を”異次元”と表現しつつも、必ず超えるという強い気持ちを持つ13歳の姿は、大人側の接し方も考えさせられる。



あれやこれと子供に押し付けるのではなく、「ハマれる」コトやモノに出会える環境をいかに多く作ってあげられるのか。
そして、ハマったのならば過度な期待は全く必要なく、とにかく信じてあげること。
この取材中も練習を一向にやめる気配が無い到樹くん。
まさにクライミングにどっぷり「ハマっている」 。
兄と世界の壁を超えていく挑戦をはじめたばかりのクライマーの目はとてつもなく輝いていた。

